どこ行くん?ほん近く。

“こんな大阪も見てほしい!”を主旨にした連載ルポルタージュ。趣あるすいなイラストと共に、大阪限定のやや濃い口なお話で綴っていきます。要となるイラストは、天満を舞台にしたNHK時代劇、「銀二貫」のタイトルイラストでお馴染みの内橋未央氏、ルポは阪上寿満子が担当致します!

第7回
天神橋筋をぶらりぶらり。
仕事を早めに片付けて今宵は「天満天神繁昌亭」へ。

スタッフと落語を観に行ってみることにした。長年天満界隈で住んで仕事もしているのに、「繁昌亭」に行ったことがないなんて、私としたことがなんとショ〜モナイ!さっそく公演スケジュールをチェックし、平日の夜の公演を選んだ。
仕事を急ぎで済ませて、19時からの公演。この日は月亭遊方さんと遊真さん、そして今回私たちのお目当でもある方正さんの演目が用意されていた。

天神さん界隈は芸ごとにゆかりが深い街!

繁昌亭といえば、すぐお隣が天満宮。正面には日本一長いお馴染みの商店街が伸びている。
夜は弓張風(?)の提灯に照らされる劇場の風情もいい。なんとなくだけど、昔の大阪らしい香りがする。
会場に入ってみると、思ったよりこじんまりとしていて、見やすい印象を受けた。天井を見上げると、タレントさんや企業さんから寄贈されたたくさんの提灯が吊るされていて、空間の雰囲気も面白い。

まず最初に登場したのは若手の遊真さん。いわゆるシュッとしたイケメン落語家さんなので固定の女性ファンも多いはず…。

それに、初めての落語鑑賞にも敷居を高くすることのないさまざまな演目、芸人さんたちがここ繁昌亭にはたくさん集まっている。今回は、コメディアンとしても親しみ深い月亭方正さんが舞台に上がられるということで、なんとなく間口もふわっと広がったし、遊方さんはなんとギタープレイでのロックな落語で意外なアングルから盛り上げてくれた。たまたまだったけれど、こういう舞台ならあまり落語に縁がないという人も、ライブを観に行く感覚で気軽に楽しめる、と思った。

年末の “あのお笑い番組” のエピソードも交えつつ、オリジナルの創作落語を披露する方正さん。楽しかった〜。

おまけに、まわりは演芸が披露される立地にふさわしい環境ときている。名物の中村屋(平日夕方くらいまで営業)の甘くて美味しいコロッケを食べながら商店街を闊歩するのも楽しいし、安くて旨い呑みの店も多いから一杯ひっかけつつ、落語談義に花を咲かせるのもよい。ちょっと歩けば大川が流れ、いま時期は天神橋や天満橋から眺める夜景も若干ドキドキする美しさだ。

落語とロックを融合させた斬新な演目でお馴染みの遊方さん。暗転からいきなりギターを抱えての再登場。劇場内が全体に明るくなって、また違った盛り上がりを見せた。

また、明治の時代にさかのぼると……繁昌亭の向かい側、いまは駐車場になっているその場所にかつて寄席小屋があり、それこそが吉本興業の始まりだったと言われている(確か20年くらい前までは古い古い銭湯が……)。
この界隈は本当に芸ごとにゆかりが深くて面白い。もう何十年も昔の話になるが、ある高級料亭には大阪の商人たちがあちこちから集まってきて、酒を飲み交わしながら思い思いに持ち芸を披露することが、商売人同士の情報交換や交流に役立っていたなどというちょっと粋なエピソードも残されていたりする。
いまでもあたりを歩けば昔のそういった風情がどこかしら残っているように感じるが、それは能楽のお稽古場はじめ、ちょいちょい落語会を開いているオフィスビル、出囃子教室や録音スタジオなどが、いまもこの地に静かに根付いているからかもしれない。
そして、7月は地元っ子お待ちかねの天神祭の渡御列やお囃子で最高に盛り上がるし、8月は関西中の阿波踊りの連が集結して、JR天満駅を起点に天神橋筋商店街を賑やかに練り歩く。
何かとお楽しみ豊富な天神さん界隈。ある意味エンターテイメントが息づくエリアとも言える。

提灯に照らされた繁昌亭。天満の街にしっくりとくる趣ある佇まい……。舞台のあとは、ここでファンの方々のお見送りや記念撮影などが行なわれる。

ということで、次回は演芸シリーズ第二弾として、繁昌亭のお隣の天満宮で毎年8月に繰り広げられる阿波踊りの総踊りの様子を久しぶりにムービーでご紹介したいと思います!乞うご期待!