冬の日が落ちた夕暮れ時、ぼんやりと灯る明かりの中で、トントン、ギコギコという音をたてながら、何やら生産中。 木づくりのこじんまりした空間からは70'sの音楽が流れている。一見何屋さんかわからなかったけれど、入ってみるとそれはそれはもうピースでキュートな手づくりアクセサリーのお店だった。
糸ノコと木槌が、この世でたったひとつの“可愛い”を生み出す。
蝶々や花をモチーフにしたペンダント、ちっともオドロオドロしくないドクロがピラピラぶら下がったピアス、ハートやお星様のかたちにニッコリスマイルがデザインされたブレス、ピアノの鍵盤に可愛いおテテが添えられたイヤーカフなどなど……。
しんちゅうの味わい深いアクセサリーはどれも一点もの。ありとあらゆるアイテムで、ありとあらゆるアイデアが斬新に盛り込まれたそのアクセサリーの数々に、思わずゴクッと喉を鳴らしてしまった。とにかく素敵なのである。つくり手のキャラと心意気が伝わって来る。
おまけにそのつくり手の土井畑里恵さんも、可愛すぎる。色が白くて、華奢で……おしゃれさん。そんな彼女の細い手に持たれる道具は、すご〜〜く繊細な刃をつけた糸ノコと、ゴッツイ木槌。それで、しんちゅうの板にマジックでさらさらと描いたスマイルをくり抜いたり、ひたすら叩いて叩いて成形すると、驚くほど巧みなスマイルパーツが完成する。簡単なようでいて、当たり前だけど絶対に難しい!
もともとイラストレーターを目指していた彼女、「うまいイラストを描く人なんてたくさんいる。個性を発揮するにはイラストだけでなく何か一芸を!」ということで彫金の世界へ……イタリア・フィレンツェで一年基礎を学んだという。
若くしてシビアに自分の可能性を見据えた土井畑さんは女子だけど、精神は頑固オヤジ的職人さん。揺るぎなさというか、ただならぬ一徹さがピシピシと伝わってくる。
モノづくりについて聞いてみたところ……彼女の場合、何も考えることなく、決めることなく、そのままありのままな感性でキャッチしたものをガンガンかたちにしていくのだそうだ。だからときには辞書をパッと開いて出てきたキーワードをヒントにしたり、音楽検索で出てきた音楽のタイトルをそのままアクセサリーにしたりすることも……。
あれこれ計画してつくるより、直感からポン!と出てきたアイデアを生かして一点ものをつくることに日々心を燃やす。そして、高価な材料でつくるジュエリーよりも、気軽で手に取りやすいアクセサリーを、ということでしんちゅうという素材を選んだ。
「しんちゅうって、色的にも素材的にもあたたかみがあるでしょ。使っていくうちに味も出てくるし。そういう素材感を生かせるよう、“明日できる一点”のためにひたむきになる……それが日々一番大事にしていることですね。」
季節感や、その日目にした街の風景、耳にした音楽など、アイデアやヒントは、つねにリアルタイムで飛び込んでくるもの。綿密なプランより、予期せぬサプライズや意外なインスピレーションが新しいデザインを生み出してくれる。フィニッシュまでどんな作品が生まれてくるかは厳密にはわからないし、思惑とは違う偶然がアクセントになることもあって楽しい。それらがこの世にたったひとつしかない土井畑さんが丹念に命をふきかけた、生まれたての一点なのだ。
糸ノコと木槌を片手に、頑固オヤジのごとく今日もせっせと金属を叩く!削る!曲げる!そんな土井畑さんのピースなアクセリーにゾッコンファンが通い詰める場所、それが『フラワーピープル』。ちょっとないデス、こんなお店……
http://flower-people.ocnk.net
営業時間:13:00〜20:00 毎週火曜日定休
住所:大阪市北区中崎2-3-6
電話:06-7492-3233
*地下鉄中崎町駅から徒歩約1分